こんにちは。
医療法人社団 愛正会
新秋津•秋津駅前まつばら歯科
歯科技工士の根本です🙂↕️
「奥歯を大きく開けて笑ったとき、銀色の被せ物が見えるのが気になる」「金属アレルギーがあるので、お口の中の金属が心配」——治療のご相談で、そんなお声をいただくことがあります。
実は、保険診療で使える被せ物の材料は「銀歯」だけではありません。条件が合えば、チタン冠(チタンクラウン)という選択肢もあります。
私は新秋津・秋津駅前まつばら歯科の歯科技工士として、日々被せ物や詰め物などの人工の歯を実際に「つくる」仕事をしています。今回はそのつくり手の目線から、チタン冠の特徴や銀歯との違い、知っておきたい注意点まで、順番にご紹介します。
🦷 チタン冠(チタンクラウン)とは?
チタン冠とは、その名のとおり純チタンを使って作られる被せ物(クラウン)のことです。2020年6月から、保険診療で使えるようになりました。
チタンと聞くと、メガネのフレームやゴルフクラブ、調理器具などを思い浮かべる方も多いかもしれません。軽くて丈夫、そしてサビにくいという特徴から、身の回りのさまざまな製品に使われている金属です。
医療の分野では、それよりもずっと前から活躍してきました。人工関節や骨折を固定するボルト、そして歯科インプラントの材料としても長く使われてきました。
ここがポイント
チタンは、体の中に入れて使われてきた実績のある金属です。そのため「生体親和性(せいたいしんわせい)が高い」——つまり体になじみやすい素材として、歯科の分野でも評価されています。
⚖ いわゆる「銀歯」とは何が違うの?
保険診療で長く使われてきた、いわゆる「銀歯」の正体は金銀パラジウム合金という金属です。金・銀・パラジウム・銅など、複数の金属を混ぜ合わせて作られています。
一方でチタン冠は、ほぼチタン1種類でできています。この「混ぜ物が少ない」という点が、実は両者の性質の違いに大きく関わっています。
それぞれの特徴を並べて比べてみましょう。
| 比べるところ | チタン冠 | 銀歯(金銀パラジウム合金) |
|---|---|---|
| 主な材料 | 純チタン(ほぼ1種類の金属) | 金・銀・パラジウム・銅などを混ぜた合金 |
| 金属アレルギー | 起こりにくいとされている | 含まれる金属が原因になることがある |
| 重さ | 軽い(同じ体積なら銀歯の半分以下) | ずっしりと重みがある |
| 熱の伝わり方 | 金属の中では熱を伝えにくい部類 | 熱を伝えやすい |
| 見た目 | 光沢のあるグレー系の色味 | 光沢のある銀色 |
| 保険が使える歯 | 奥歯(大臼歯)と前歯 ※詳しくは後述 | 幅広い歯に使える |
| つくりやすさ | 専用の設備と技術が必要 | 広く普及していて扱いやすい |
こうして並べてみると、チタン冠は見た目の白さよりも、体へのなじみやすさに特徴のある材料だといえます。

▲ 実際のチタン冠です。銀歯と同じように光沢はありますが、色味は落ち着いたグレー系をしています。
✓ チタン冠の主なメリット
① 金属アレルギーが起こりにくいとされている
金属アレルギーは、金属が唾液に触れてわずかに溶け出し、体内でイオンとなって反応することで起こると考えられています。
チタンは表面に非常に薄い膜(不動態皮膜)を作り、内部が溶け出しにくい性質を持っています。そのため、金属アレルギーが起こりにくい素材とされています。
金属アレルギーの症状は、お口の中の炎症だけとは限りません。手のひらや足の裏の湿疹など、皮膚のトラブルとして現れることもあるといわれています。
ただし、そうした症状の原因がお口の中の金属だと決まっているわけではありません。気になる症状がある場合は、まず皮膚科でアレルギー検査を受け、その結果をもとに歯科と相談していくことをおすすめします。
② 銀歯より軽い
チタンは、同じ大きさで比べると銀歯の半分以下の重さしかありません。奥歯の被せ物は面積が大きいぶん、この差は意外と体感しやすい部分です。
そのため、装着後の「重たい感じ」が気になりにくいとおっしゃる方もいらっしゃいます。ただし感じ方には個人差があります。
③ 熱が伝わりにくい
「銀歯を入れてから、熱いお味噌汁や冷たいアイスがしみるようになった」というお悩みを聞くことがあります。これは金属が熱を素早く神経側に伝えてしまうことが関係している場合があります。
チタンは金属の中では熱を伝えにくい部類に入ります。そのため、温度の刺激が神経に届きにくいと考えられています。
④ サビに強く、変色しにくい
お口の中は、常に唾液があり、熱いものと冷たいものが交互に入ってくる過酷な環境です。金属にとっては決して優しい場所ではありません。
チタンはサビや変色に強く、長く使っても金属が黒ずみにくいという特徴があります。銀歯のように、歯ぐきの境目が黒っぽく見えてくる変化も起こりにくいとされています。
⚠ 知っておきたい注意点
良い面ばかりに見えるチタン冠ですが、選ぶ前に知っておいていただきたいポイントもあります。
⚠ 白い歯ではありません
チタン冠はあくまで金属の被せ物です。銀歯よりも落ち着いた色味とはいえ、天然の歯のような白さにはなりません。見た目の白さを最優先にしたい場合には向きません。
⚠ 保険で使える歯が限られています
どの歯にも使えるわけではなく、対象となる歯が決まっています。詳しくは次の項目でご説明します。
⚠ アレルギーのリスクが完全にゼロになるわけではありません
チタンは金属アレルギーが起こりにくい素材ですが、ごくまれにチタンに反応する方もいらっしゃいます。すでに金属アレルギーの症状がある方は、皮膚科でのアレルギー検査の結果をふまえて材料を検討することが大切です。
⚠ 製作に手間と時間がかかることがあります
歯科技工士の立場から正直にお伝えすると、チタンは決して「扱いやすい」金属ではありません。融点が非常に高く、一般的な鋳造の設備では溶かすことができないため、専用の炉と技術を持つ歯科技工所でなければ製作できないのです。当院でチタン冠をご希望の際は、そうした専門の技工所と綿密にやり取りをしながら、噛み合わせの高さや厚みなど、お一人おひとりのお口に合わせた精密な仕上がりになるよう連携して進めています。お渡しまでの期間は通常より長くなる場合がありますが、それだけ手間のかかる工程を経ているとご理解いただければと思います。

▲ 被せ物づくりは、こうした細かな手作業の積み重ねです。顕微鏡で拡大して確認しながら、髪の毛ほどのわずかな厚みや形を調整して仕上げていきます。
📋 保険が使えるのは、どの歯?
ここが、チタン冠を考えるうえでいちばん大切なポイントです。保険のルールで、使える歯がはっきりと決められています。
| 歯の場所 | チタンの被せ物 | ひとこと |
|---|---|---|
| 奥歯(大臼歯) | ◎ チタン冠が使えます | 2020年6月から保険適用。噛む力が強くかかる場所です |
| 前歯 | ◎ レジン前装チタン冠が使えます | 2022年4月から保険適用。表側に白い樹脂を貼り、正面からは白く見えます |
| 小臼歯 | — 保険の対象外です | 条件によっては、保険で白い被せ物を選べる場合もあります |
また、チタン冠は1本ずつの被せ物(単独冠)が対象です。なお、根を分けて治療した奥歯には使えないなど、細かなルールもあります。
2026年6月からの新しい動き
これまでチタンは1本ずつの被せ物にしか保険が使えませんでしたが、2026年6月からチタンのブリッジも保険の対象になりました。歯を1本失った部分を、両隣の歯で支えて3本つなぎで補う治療です。
当院でもこのチタンのブリッジに対応しています。ただし対象となる歯の条件がありますので、まずはお口の状態を拝見したうえでご案内します。

こんな方に向いています
これまでの内容をふまえると、チタン冠は次のような方と相性が良い材料です。
- ✓ 金属アレルギーが心配で、お口の中の金属を見直したい方
- ✓ 奥歯の被せ物なので、見た目より体へのやさしさを優先したい方
- ✓ 銀歯を入れてから、熱いもの・冷たいものの刺激が気になっている方
- ✓ 保険診療の範囲で、できるだけ体になじむ材料を選びたい方
- ✓ 以前入れた銀歯の周りの歯ぐきの色が気になっている方
反対に、「奥歯もできるだけ白くしたい」という見た目重視の方には、別の選択肢のほうが合う場合もあります。お口の状態やご希望をうかがったうえで、一緒に考えていきましょう。
よくある質問
Q. チタン冠は白い歯ですか?
A. 奥歯に使うチタン冠は金属そのものの色で、白くはありません。銀歯と同じように光沢はありますが、色味は落ち着いたグレー系です。なお前歯の場合は、表側に白い樹脂を貼ったレジン前装チタン冠になるため、正面からは白く見えます。
Q. 金属アレルギーがあれば、必ずチタン冠にできますか?
A. 保険で使える歯が決まっているため、すべての歯をチタンに替えられるわけではありません。また、どの金属に反応しているかによって適した材料も変わります。まずは症状やアレルギー検査の結果をお聞かせください。
Q. 今入っている銀歯を、チタン冠に替えられますか?
A. 歯の状態によりますが、対象となる歯であれば替えることも可能です。ただし外してみて初めて中の虫歯がわかることもあるため、まずはお口全体を検査したうえでご提案します。当院の虫歯治療のページもあわせてご覧ください。
Q. 保険は使えますか?費用はどのくらいですか?
A. 対象の歯であれば保険診療でお作りできます。費用は歯の状態や必要な処置によって変わりますので、診察のうえでご説明します。
Q. チタン冠は何年くらいもちますか?
A. 材料そのものはサビに強く丈夫ですが、どんな被せ物でも長持ちするかどうかは日々のケア次第です。被せ物の下から虫歯が再発することもあるため、定期検診でのチェックをおすすめしています。
まとめ
チタン冠は、保険診療の中で選べる「体になじみやすさ」を重視した被せ物です。最後にポイントを整理しておきます。
- ✓ 純チタンで作る被せ物で、2020年6月から保険適用
- ✓ 金属アレルギーが起こりにくいとされ、軽くて熱も伝わりにくい
- ✓ サビや変色に強く、歯ぐきの黒ずみも起こりにくい
- ✓ 保険で使えるのは奥歯(大臼歯)と前歯。小臼歯は対象外
- ✓ 2026年6月からはチタンのブリッジも保険の対象に(当院でも対応しています)
- ✓ 白い歯ではないため、見た目重視の方には別の選択肢も
被せ物の材料選びは、見た目・費用・体へのやさしさなど、大切にしたいポイントによって答えが変わります。
当院でも、被せ物や金属アレルギーについてのご相談を承っています。「金属アレルギーが心配」「奥歯の銀歯が気になる」という段階でも構いませんので、どうぞ気軽にお声がけください。
当院の公式Instagramでも、治療やお口のケアに関する情報を発信しています。あわせてチェックしてみてください。
お口の中のお悩みや、治療について気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

